1988年「ユーロスペース」ナイト・ムーヴィー2月プログラム
「デッドゾーン」は、1985年「東京国際映画祭」で特別上映後、1987年6月ユーロスペースでロードショー公開。さらにその後、ユーロスペース名物だった日替わりのナイト・ムーヴィー(レイトショー)でも1988年2月5日から4月29日まで13週、毎週金曜夜9時から一般1000円、会員800円で公開された。
1988年7月からはクローネンバーグの実験室として、「ステレオ」1988年7月7日(木)~11月24日(木)まで21週、「クライム・オブ・ザ・フューチャー」1988年7月1日(金)~11月25日(金)まで22週、夜9時から一般1200円、会員1000円でレイトショー枠ながら日本初公開。
公開時、入場者に配布されたレジメ。「すべてはここから生まれた クローネンバーグの実験室」B4両面二つ折りにB5両面1枚をはさみこみ:計6ページ
「ステレオ━━均衡の潰失 STEREO」、「クライム・オブ・ザ・フューチャー 未来犯罪の確立 THE CRIME OF THE FUTURE」(原題はTHE CRIMES OF THE FUTURE)、両作品についてあらすじ、のちの商業作品へつながる描写や設定への鋭い指摘等、読み応えたっぷりな解説。無記名なので、ユーロの関係者だろうか。
クローネンバーグ作品の最大の魅力は、あっと驚く独創的な発想にある。どの作品にも、「科学や技術の発達にともない、予想もしえない恐るべき事態が発生する」「人間の生命、肉体は精神に潜む神秘的な未知の世界が生み出す恐怖を予言している」、という共通事項が見られる。
上記の共通事項は「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」「The Shrouds」まですべての作品に一貫して見られる根幹だ。数年後、SONYから両作品ともに単独でVHSで発売され、レンタル店でも流通した。VHSのタイトルや作品解説、「ここからすべてが生まれた」等、表記の元ネタのすべてはこの6ページにある。
2024年時点、「ステレオ━均衡の潰失 STEREO」のタイトルは、ネット上では「ステレオ/均衡の遺失 STEREO」でほぼほぼ統一されていて謎。ソニーのビデオは「潰失」。ネットで検索すると2014年第15回東京フィルメックスでの上映時タイトルが「遺失」になっていた。10年で「遺失」が蔓延してまったのか?さらにその前の事案があったのか謎である。もともとユーロスペースがつけたタイトルだが「ヴィデオドローム」が「ビデオドローム」になってしまったことを連想してしまい、オールド・ファンにはちょっとやるせない顛末。
欧日協会からユーロスペースへ、当時の状況は「ミニシアター再訪」※のユーロスペースに関する章「渋谷の新しい可能性」に詳しい。「ヴィデオドローム」公開の1985年6月のパンフには(外国語学校、映画ほか多目的ホール経営の)欧日協会と(映画メインの)ユーロスペースが併記されている。
※「ミニシアター再訪 都市と映画の物語1980-2023」大森さわこ ARTES 2024年5月30日 初版第1刷発行 3500円(税別)