1992年8月31日発行
発行人:今野祐一 発行:ペヨトル工房
- クローネンバーグ映画解説 西嶋憲生 ニコラス啓司 柳下毅一郎 鷲津義明 品川四郎
- 柳下毅一郎 クローネンバーグ記者会見記
- デイヴィッド・クローネンバーグ ロングインタビュー ウィリイアム・ベアード+ピアース・ハンドリング THE SHAPE OF RAGE:an excerpt David Cronenberg ed.by Piers Handling (1983) 訳:渡辺佐智江+柳下毅一郎
- 三留まゆみ クローネンバーグは眠らない
- 友成純一 インターゾーンへようこそ
- 青山正明 孤独なアウトサイダー
- 吉原聖洋 インターゾーンからの報告書
- 山形浩生 文学に屈した映画「裸のランチ」
- 永江朗 クローネンバーグのセクシャリティ
- 布施英利 映画の小道具、病院の小道具
- 根本敬 Deddo Zon 戦慄のランチドローム
- 滝本誠×柳下毅一郎 「裸のランチ」から「クラッシュ」へ
- クローネンバーグ略年譜 青山正明
- フィルモグラフィ 編集部編
P192
表紙こそ「ザ・ブルード」だが、1992年の本なので「裸のランチ」への言及が中心。おなじみの執筆陣で、どの評もおもしろい。もっと一般的な媒体では抑えめだった山形浩生が「文学に屈した映画「裸のランチ」」と題して正直な感想を(たぶんこれでも)抑え気味に披露している。ただ「裸のランチ」に不満をもちながら、(当時)次回作の予定だった「クラッシュ」に期待しているところは、他の執筆陣もみな共通している。他者を手厳しく批評すればするほど、実のところそこでさらけ出されるのは批評の対象ではなく、むしろ批評者自身でしかないことがよくわかる。褒めるときよりも、嫌悪の表現のほうが批評者の素顔がダダモレ気味になるところもまた怖ろしいが、こればかりはどうしようもない。
結局いちばんおもしろいのは「The Shape of RAGE」の一部翻訳でもあるロングインタビュー。昔のことから、インタビュー時の現在と思われることまで平常運転のクローネンバーグがよくわかる。