実は、「北北西・・・」はヒッチコックの中でも大嫌いな作品なのだった。
名作だ、冷戦構造だ、ラシュモアだと表層的な予備知識ばかりが先行し、
その結果、本格スパイ・サスペンスだと期待していた当時の私は
リアリティのかけらも無い話と、ゆるゆるなキャラクターに
脱力したというよりも激怒したものだ。
が、私ももはや四十朗になろうかという21世紀。
日曜真昼間の自宅テレビで偶然目に入った、「北北西・・・」のとあるシーンのエロ描写は、あまりにも強烈だった。
それはケーリー・グラントとE・M・セイントが、お互い本心は隠しながら、恋人を演じる=ハラを探り合うというシーンなのだが、不必要にエロくて長い!
ディープ・キスとかしてないし、ほとんど着衣なのだが、もう金髪フェチの変態監督の本性炸裂!って感じのエロ・モード全開なシーンだった。
で、もう釘付けですよ。
気がつくと全部見ちゃってました。
おかげで休日出勤遅れましたよ。
途中、オークション会場の脱出シーンなんか爆笑。
おまけにラスト、トンネルに突っ込む列車のカットでTHE ENDって・・・
なんだよそれ?!ディープ・スロートかよ!すっげえ下品な親父ギャグじゃん!と、すっかり印象が新規更新されました。
まるで落語みたいなホラ話。
最初からコメディだと思ってみれば、面白い映画なのに、生真面目な若い自分には、わからなんだということだ。
「北北西・・・」の評価は180度変わったが、DVDを買うほど好きにはなれん監督だと、そこんとこはあらためて認識する。ヒッチコックって、見てる間は面白いけど、見終わって後に何も残らないのだ。カラッポな感じ。その点、スピルバーグって立派なヒッチコックの後継者だろう。