The Fly (1986)
あらすじ
某巨大企業(バートック産業)の資金援助で孤独に物質転送機を開発する天才科学者セス・ブランドル(ジェフ・ゴールドブラム)。実験の成功直前に、女性ジャーナリストのベロニカ(ジーナ・デイビス)を自身の研究ネタでナンパに大成功。ところがあるきっかけで、セスは、ベロニカの元恋人でもあるジャーナリストの上司(ジョン・ゲッツ)に大嫉妬。酒の勢いもあって、自分とハエを一緒に転送してしまう大ポカをやらかしてしまう。そして…?!
96分
<以下ネタバレ>
ハエと融合してしまった大ポカを、
主人公が自覚していないドラマ前半から後半までの描写が恐い。
主人公の科学者は、
破滅の予兆(眠れなくなる・異常な体力が発揮できる等)を、
転送に成功した結果だとポジティブに誤解してしまうのだ!
それを変だと正しく先に気づくのはもちろん恋人のジャーナリスト。
さらに凄いのは、
実験に失敗したことに気づき、
死を予想して絶望を経たその後の展開だ。
なんとクライマックスでは
すっかり変身してしまったキャラクターとして
ギリギリの土壇場でものすごい発想の転換をする。
変身した自分と、妊娠した恋人=女性+お腹の赤ちゃんを
合体してしまい、さらに新しい生物としてサバイバルしよう!
と試みるとこだ。
結果、失敗してしまうわけだが
このギリギリまで前向きな主人公には
感動を覚えざるを得ない。
ごく普通(?)な「成功」を望んだ男が
いつのまにか、陥るドツボな最悪の事態…。
悲劇の基本をきっちり抑えながら
異様な描写と、ブラックなギャグが
ラストの悲劇的な結末で炸裂する大傑作。
ザ・フライ以降、クローネンバーグは
ジャンル作品から徐々に離れ
文芸路線(?)を驀進する。