Mバタフライでジュレミー・アイアンズ演じる外交官ガリマールを翻弄する
中国の「女」スパイを演じる。
ジョン・ローンが女に見えないなどという感想は無意味だ。
物語最後で(アイアンズ演じる)ガリマールが独白した通り
彼は(ローンが演じた)ソンという人間を愛したわけではなく
ソンを媒介にして自身の理想像を見ていたに過ぎないのだ。
とはいえ、その理想像はあくまでもソンという生身の他者を必要としていたところが
話のミソでもあり、キモ(=重要)なところだ。
ミイラ取りがミイラに。
オレはヤツを殺そうとしてたのに
気がついたらオレは、オレを撃ってました…。
という物語の構造は、まったくもって
いつものクローネンバーグ・ストーリーである。
余談になるが、実話のガリマールとソンは、
アイアンズとローンとはまるで似ても似つかない。
醜いフランスの中年親父と、それこそとても女には見えない東洋人である。
世界の多様性は、計り知れない。
■他作品
The Last Emperor (1987)
Year of the Dragon (1985)
Iceman (1984)
ほか多数