沖浦和光 おきうら かずてる 文春文庫 657円+税
2004/11/10 第1刷 (2001年11月 文藝春秋刊 単行本)
解説「難民の世紀に」 佐藤健二
こりゃまた見事な解説。実は「サンカという幻想」がいかにして作り上げられたかを追求した本だった。
沖浦氏は、民俗学の柳田國男や歴史学の喜田貞吉らアカデミズムの論だけでなく、戦前から戦後の大衆文化に大きな影響を与えた三角寛の大衆小説も視野に入れつつ、「サンカ」という幻想が作り出された過程を推理する。
国家という体制から自由だった古代民族というロマン主義的なアカデミズムも、時の警察権力や国家権力の補完装置として機能したとしか思えない過剰な物語性も、どちらも徹底的に批判される。
結果、明らかになるのは、サンカが日本の体制が綿々と作り上げた「身分制度=階級装置」が生み出した「難民としての」サンカ像だ。
体制的な歴史学の視点を徹底批判したエスノメソドロジーを思い出した。