ドキュメント 戦争広告代理店
情報操作とボスニア紛争
高木徹
講談社文庫 2005/6/15 第1刷 ¥619+税
読みながら、
バリー・レヴィンソン監督「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」
を思い出した。
あの映画でネタにされていたのは、
実はTVや映画の単なる「情報操作」ではなく
「PRプロフェッショナル」だったわけだ。
いまさらだけど・・・w。
読んでいて、想像以上に勉強になったし
各賞総なめも当然の面白さと思ったことも事実だが、
著者のスタンスに、どうにも居心地の悪い思いが残った。
鎌田慧に代表されるような、「怒り」や「情念」が欠落しているかのような物言いが散見されるところだ。森達也のクールさとも違う。NHK記者というサラリーマン臭とでも表現したくなる中途半端なクールさが気になってしかたがなかった。
本自体は、「戦争広告代理店」に対する「批判」としてみごとに機能しているのだが、あとがきでは、「PR戦争」の「倫理を問う」ことは棚上げにされ、「余裕が無い」などと理由にもならない言い訳で、判断を放棄してしまっているところだ。
本多勝一は情念の激しさゆえに老醜をさらしてしまったが、知性(好奇心?)だけでも立花隆のように哀しい末路を遂げてしまうのが人間だ。
いくら知性があったとしても、所詮サラリーマン根性の行く末は体制の奴隷、よくて補完装置が関の山だ。そんなことは、無芸大食い愚鈍なおれでも知っていることだ。
とエラソーにまとめたところで、著者プロフィールを見てびっくり。1965年生まれって同年齢じゃん!東大でNHKなエリート様じゃん。
倫理感ってのは、僻み根性と貧乏人の特権というわけでもないと思うが、「戦争広告代理店」は、軍隊と同様「悪」だろ。
人民が判断放棄することで、喜ぶのは代理店や体制側だけだ。