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三鷹事件 1949年夏に何が起きたのか

[ book ]


片島紀男 定価1,419円 新風舎
2005/3/5 第1刷 (1999/6 日本放送出版協会 刊行)

「三鷹事件」から何を学ぶか 落合雄三
解説 森達也

冤罪のまま獄中死した竹内景助氏の無念を思うと、言葉もない。

時の政治的裁判により、無実の男が「死刑」判決のまま獄中死する無念。

まったくもって度し難い。

933ページもの分厚い文庫本は、「未完」の二文字で終わっている。
竹内氏の名誉回復は、2005年の今もまだ、なされてはいない。

死刑囚

傷つきたおれた兵士が
ただ一人塹壕に取り残された
彼は声をしぼって救いを求め
おもいを費やして助けを望んだ
だが
時に慌ただしい戦場では
負傷兵を捜し求める余力もなくて
空しく幾日も放っておいた
そんなとき兵士は思う
むしろこうしていて
そっと傷を癒すのがよいか
あくまで外に向かって援けを求むるがよいかと
むづかしいところだ
戦場ではしばしば
敵よりも味方が苛酷になる

ああ
思えば戦いの最中は
陽が高く
ものみな明るくて
生死も念頭になかったから
このような一介の兵士さえも
勇敢に振舞ったのだが
戦いが済んで陽が昏れてみると
白雲もいつか夕陽に消え
戦友も去って曠野に人影なく
虫の声だけが心にしみる

傷つきたおれた兵士が
塹壕の中から援けを求める
五たび十たび
百回 千回 ・・・・・・・・・・・・
それでも応答がないと知ると
彼は
そっと自ら癒すのが良いかと・・・・・・・・・・・・
星に向かってそれを尋ねる
兵士の心が
心の町の灯りよりも
星のまたたきと会話する
平和はまだ遥かで
平和は
むしろ兵士と塹壕の中にある。

(東鉄詩和会「詩生活」59号所収、64年12月発行)

三鷹事件 1949年夏に何が起きたのか 853~855ページより

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2005年10月07日 00:30に投稿されたエントリーのページです。

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