« 元気なぼくらの元気なおもちゃ | メイン | スプードローム 完成版 »

嫌われ松子の一生

[ movie ]


監督・脚本:中島哲也
原作:山田宗樹
出演:中谷美紀、瑛太、谷原章介、宮藤官九郎、谷中敦、劇団ひとり、荒川良々、伊勢谷友介、香川照之、柄本明、ゴリ、 市川実日子、黒沢あすか、榊英雄、木村カエラ、蒼井そら、柴咲コウ、片平なぎさ、本田博太郎、奥ノ矢佳奈、マギー、竹山隆範、甲本雅裕、キムラ緑子、角野卓造、阿井莉沙、大久保佳代子、BONNIE PINK、濱田マリ、武田真治、木 野花、渡辺哲、山本浩司、土屋アンナ、AI、山下容莉枝、山田花子、あき竹城、嶋田久作、木下ほうか

渋谷シネクイント 2006/6/6 19:00

傑作。本年度ベスト1。

聞きしに優るとはこのことだ。

10年に1本の傑作だった。

ノワールな、あまりにもノワールな逸品だった。

最初は、ちょっとCGやりすぎじゃね~の、とか
繰り返しギャグ多すぎだよぉ、とか思ってたが
あれよあれよというまのたったの2時間。
途中何度か泣かされた後、ラストでついにきた!某●●シーン!
(蒲田みたいなケレンも無ければ、フレンチ・コネクションのような爽快感からも無縁かつあまりにも、あまりにも無惨で無様な●●オチ…)
からはもう涙が止まらなかった…

昭和(高度成長以降)の時代を総括したとも見える社会派なスケールのデカサを抱擁しつつ、あまりにもボンクラだった一人の女の一生を情容赦なく描くその手法。CGと編集テクニックという金と技術を過剰なまでに駆使しながら、あくまでも人間の情念に焦点をあわせた屈折したストーリー!天才の仕事と絶賛されるのも納得の凄さだ。

うちのめされた。

え?なんの話ですかって?

女トニー・モンタナ!暗黒街の顔役も横目に通り過ぎる名作。荒川河川敷を舞台にした壮大な日本版「風と共に去りぬ」!

スカパラ店長、カッコ良かったスw
伊勢谷もキャシャーンの666倍良かった。
特に殴って逃げるトコw
武田真治の足にズブっとくるところや
宮藤がズガーーーーッとなるところや
ひとりがスッと金を差し出すところや
荒川が思わず押し倒してしまうところや
柄本の笑いが徐々に消えてしまうところや
とにかく細部の情報量がものすごかった。

デパート屋上と、川と星空のシーンは圧巻でした。

そして川を走る船。船上で楽しげに歌う女子生徒たち、指揮をとる松子先生。
川辺でそれを、ぼうぜんと目撃するひとりの男。

すべてがみごとな映像で描かれる。
すばらしい!

おもしろい映画は、必ず重層的な構造を持っているが「嫌われ松子…」もまさにそれ。

まずは松子にどっぷり感情移入してみるのが基本とはいえ、それだけで終わらない(というか終え様もないw)ところが凄い。

松子を見て、日本でいちばん悔しい思いをしているのは、押井監督だと思う。押井監督作は、アニメ的表現で日本を(自分を)総括したいという欲望に突き動かされているように思えてならない。とくに「立喰師列伝」だ。

「松子」を昭和史総括としてみた場合、押井監督の「立喰師列伝」の私小説じみた限界は、嫌というほど明らかになってしまう。「松子」の凄いところは、松子の主観を誇張しながらも徹底して描くと同時に、松子のだめっぷりをも客観的に描写しつくしているその情容赦ないリアリストとしての姿勢だ。主観(ファンタジーなハッピー・エンド)と客観(ドス黒いノワールなストーリー)が、みごとに融合しながらも並置されている。一方、一見クールな印象をうける「立喰師列伝」は、実はどこまでも主観的でずぶずぶな妄想的世界から、一歩も飛びそこねている大甘な印象が残るのだ。

現実世界はクールだ。

ああ、今度こそ人生終わった…

もはや数えようもないほど何度目かの一念発起に、こんどこそ、こんどこそほんとうに、地に足のついた復活だと思わせるその瞬間!

松子の頭上に振り下ろされるのは、残虐きわまりない通りすがりの他者の一撃だ。

それは、監督が松子を愛するが故の裁きの一撃であり、未来からの審判でもある。

すげえ、すごすぎるよ…

※松子の「ひょっとこ面」を、「七人の侍」の菊千代が元ネタではと喝破したお楽しみはココからだは必読。ほんとうに監督が参考にしたかどうかは横においといても、ひょっとこ面が持つ「機能」を活用したキャラとして、松子と菊千代が並ぶのはおもしろい。おもしろいし、しっくりくる。 追記:06/08/05

About

2006年06月08日 00:33に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「元気なぼくらの元気なおもちゃ」です。

次の投稿は「スプードローム 完成版」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。