監督: 久松静児
出演:香川京子、森繁久弥、津島恵子、乙羽信子
原作: 野上丹治、野上洋子、野上房雄
1958年 104分 モノクロ
11月13日、日本映画専門チャンネルで偶然見始めたのだが、途中で用事ができたため録画しといた。で、今日やっとこ最後まで見た。
感動した。
一見、ベタなお涙頂戴ものと誤解されかねない題材だが、トタン職人で子沢山父ちゃんはじめ、主人公一家の描写、学校や、近所の人たち、ラストでサラリと描かれる新聞記者や隣人たちなど、けっこう突き放した描写が多く、戦後から高度経済成長期直前の時代(昭和50年代)の風俗描写など興味深いことこのうえない。
昨今、映画やテレビで描写される「ノスタルジックな昭和」など「つづり方兄妹」で見られる描写と比較すれば、出来損ないのファンタジーも同然だ。
風邪をひいたことから急死してしまう子供の話は、世界のどこかでは今も変わらぬ現実の一場面だろうが、それがかつての日本でも「普通」だったことが、この映画でもリアルに描写されている。
小津やら溝口やら成瀬やらの生活圏外にある「家族」の姿が生き生きと描かれる。
駅前シリーズの庶民派監督ならではの素晴らしい映画だ。
1958年、住井すゑは、56歳だったが、なんとこの映画を見て「橋のない川」を書くきっかけとなったそうだ。第一部は、翌59年、部落問題研究所の雑誌「部落」の1月号から連載されている。