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The Nothing Man Jim Thompson 訳=三川基好 2006/6/30 第1刷 扶桑社ミステリー ¥800+税 <解説>”惑星”トンプソン領からの挨拶/中森明夫
もちろん傑作だった。
トンプソンに慣れた読者であればあるだけ、最後に驚かされること必至な異色ミステリだ。
あとがきの中森明夫は何かというと黒幕気取りなお方だけあって、硬軟とりまぜた参考文献だらけの解説は、トンプソンの小説に出てくるインテリ気取りな間抜けキャラそのものという仕掛け。だが「失われた男」の物語は、そんなありがちな解釈など軽く射程距離内に想定済みという凶悪な一撃だ。
本の主人公を哂うことはもちろん、同情することすらあらかじめ封じられている。
「ほかに道はないぞ」
読者に呪いをかけるそのセリフは、あまりに平易でありながら、恐ろしいまでに深く出口の見えない底なしの罠だ。
おそるべしジム。
日時: 2006年07月23日 11:00 | パーマリンク
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