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1945年8月15日、玉音放送では戦争は終わらなかった。日本軍山西省残留問題の当事者 奥村和一氏は、裁判の証拠を求めてかつての戦場、中国を訪れる。そこで発見したのは日本軍と国民党系軍閥の密約を裏付ける書面だった。が、奥村氏が「発見」したのはそれだけではなかった…
¥800で販売されていた映画のパンフレット9ページに、奥村氏が完結に映画のすべてをまとめている。
80歳を過ぎて今なお、若かりし頃に叩き込まれた軍隊の教えを宿す己を発見し慄然とすると共に、教育の恐ろしさに愕然とした。戦争は過去のものとも他人事とも思わない。あの時代の人々は皆、苦難の道を歩んだ。あの時代の全ての人々夫々に「わが家と戦争」があった。それが子や孫たちに伝えられることで、戦争を知らない世代にも「私と戦争」が見えてくる。夫々の人の「人間と戦争」が一つとなった時、新しい未来が創りだされるであろう。
奥村和一
映画では、日本軍が国民党へ2,600人もの軍人を「売り渡した」証拠を探す過程で、嫌がうえでも日本軍の蛮行が現地中国の人たちによって語られる。俗に三光作戦とよばれた旧陸軍の残虐さは、当の帰還兵の大半の人たちの口を閉ざすことになった。奥村さんでさえ自らの戦争体験を妻に語ったのは、なんと敗戦から50年後(!)だったのだ。
奥村さんが戦時の証言を願ったかつての上官は、未だに自ら目撃・体験した地獄を語ることを拒む。「ゆきゆきて神軍」でも見たあの光景がここでも繰り返される。
靖国神社で兵隊ごっこに興ずる大きなお友だちのみなさんや、ネットでポルノサイト並の検索ヒット率を誇るネット右翼の方々には、ぜひとも「公式文書」や「階級の偉い軍人さん」の話ではなく、奥村さんのような一兵卒の話をこそ聞いてほしいものだが、すでに「中共の陰謀」で片付ける連中もいるようだ。都合の悪いことはぜんぶ「敵」の陰謀で片付ければ簡単つやあ簡単ですからね。マンガに出てくる悪の秘密結社と同レベルの解釈だけど、あらゆる組織・集団が武器にするのは、こうした類型的な「思考停止の罠」だわな。
現実にはマンガ以上に奇怪でおぞましく矛盾に満ちた愚行や事件ばかり。それが異常であればあるほど理解は得難く、感情移入も難かしくなる。米軍のイラク派兵、イスラエルのレバノン爆撃、親殺しに子殺し、洋の東西、コトの大小は関係ない…
が、一方では、非現実的な映画やテレビやドラマのありえない主人公に「感情移入」する日常が積み重なっていたりする。
現実の問題には非現実感を覚え、非現実的な問題には感情移入。
まさに倒錯。人間疎外とはこのことではないか。
奥村氏の闘いは今も続く。これからも続く。
奥村氏の苛烈な「日常」とは比較しようもないが、戦争を知らないメディア漬けの戦後生まれの41歳の社畜である私も、それなりに「私と戦争」を忘れないようにしようと思う。まったくもって貧相な闘いではあるが、一寸の虫にも五分の魂です。
コメント (1)
はじめまして。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
ときどき寄ってみてください。
蟻の兵隊をとりあげました。
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投稿者: kemukemu | 2006年09月14日 21:23
日時: 2006年09月14日 21:23