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ファーストフード・ネイション

[ movie ]

http://www.fastfoodnation.net/
Fast Food Nation
監督:Richard Linklater
出演:Greg Kinnear、Catalina Sandino Moreno
2006年 108分
渋谷 ユーロスペース2
¥1,800 当日
¥400 パンフ

★★★★

傑作。

スキャナー・ダークリー」で、映画史上はじめてディックをまともに映像化することに成功したリンクレイター監督は、まったく同時期(2006年)にリアル社会に流通する 物質D の映像化にも成功していた。

「スキャナー…」同様、映画で描かれるのは 物質D がいかに危険な物質なのか?といった啓蒙ではない。すでに 物質D が蔓延してしまっている世界のなかで、平均的な人々の日常生活をていねいに描写しているだけだ。狂った世界で、まともに生きようとするフツーの人たち。

リンクレイターは、ここでも原作(ノン・フィクション)の行間で描かれたエッセンスを、もののみごとに映像化(フィクション)している。

スキャナー・ダークリー と ファーストフード・ネイション をつなぐ現実世界で蔓延済みの 物質D とは何か?

貨幣である。金。銭。賃金。グローバリゼーション。資本主義社会のノワール。

「ファーストフード・ネイション」には多くの人物が登場するが、メインとなるキャラは2人に絞ることができる。

ミドル・アッパーWASP男(Greg Kinnear)と、ロウワーメキシカン女(Catalina Sandino Moreno)。男は「地獄」を「調査」する。女は「地獄」を「生きる」。

映画には何の救いも結末も無い。

リトル・ミス・サンシャインで親子を演じた Greg Kinnear と Paul Dano が、ファーストフード・ネイションではまったく違う他人の関係を演じているが、どうしたってあの親子を連想してしまう。キャスティングの妙だ。

原作でも「ぞっとしたある描写」が、映画では視覚的にもドラマ的にもわかりやすく、誤解しようもない形で登場した。あれは怖い。びびった。ヘタなホラーよりもずっと鳥肌ものだ。

傑作だ。

>>ファーストフード・ネイション 粉川哲夫の【シネマノート】
>>M.マクラレン×R.リンクレイター=大人のパンクごころ・・・Fast Food Nation THE BRADY BLOG

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2008年02月25日 23:46に投稿されたエントリーのページです。

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