War of the Worlds
渋谷シネタワー 19:25
スピルバーグは狂人だ。
劇場はガラガラだったが、それも納得。
たしかに狂人にしか描けない真実はあると思うが、
ハリウッドのオエライさん方は
初号試写で頭を抱えたに違いない。
カップルや善良な親子連れが期待するであろう
適度なサスペンスは絶無。
唐突に巻き込まれる戦場での生き地獄が
ものすごいSFXの迫力で描かれる。
映画前半から中盤での凶暴っぷりは、
シンドラーでタガのはずれた
スピルバーグ監督、最高の凶悪っぷり。
空から、ボロボロになった服(元犠牲者)が雨のように降ってくるシーンは
「はだしのゲン」かと思う壮絶さだ。
<以下 完全ネタバレDEATH>
日本でのパブリシティは、オリジナルのジョージ・パル版との比較はもちろん
H・G・ウェルズ原作も、あまり触れないようにとのお達しだったらしいが
意外やストーリーだけ見れば、殺伐度に目をつぶってしまえば
パル版のリメイク以外のなにものでもない。
とはいえ、映画が終わってみれば、
前半から中盤で描かれる機械化戦争の
破壊と虐殺シーンの印象があまりにも強烈で、
旧作にあったセンス・オブ・ワンダーとか
爽快感のカケラはこれっぽっちも残らないw。
こんな残虐さは、オリジナルにはかけらも無かった。
平和な国の小学生が見たらトラウマ間違いなしだ。
ラストの米軍の反撃と、
とってつけたようなハッピーエンドでは
何のカタルシスも得られない。
脱出の途中で車を暴徒に奪われるトム一家のシーンは
まるでゾンビを思わせる殺伐名シーンだ。
もちろんウォーマシーンによる
殺人レーザー光線炸裂虐殺シーンは、
想像を遥かに超えるもの凄さだった。
そもそも
映画でトライ・ポッド(3本脚)と具象的に呼ばれ、
メカニックに描写されるウォー・マシンは、
ウェルズが現実の世界大戦(第一次世界大戦)に
ショックをうけて想像した・・・
という説をむかしどっかで読んだ記憶がある。
※・・・というのは勘違い。ウェルズの原作は1897年に発表。第一次世界大戦は1914年から始まった。たぶん「ウェルズは、第一次世界大戦の機械化戦争(戦車や飛行機)を予言した」・・・というような紹介文の記憶が歪んだのだろう。老化だ。
宇宙戦争が出版されたその後、
ウェルズの想像すら超えたであろう
第二次世界大戦が起こる。
以後、長距離爆撃機や核兵器など、
大量虐殺を目的とした兵器は
続々と現実に開発され続け、
実際に使われている。
そんな戦争は、われわれ一般人からしたら
「宇宙戦争」で描かれるような
巨大でメカニカルな虐殺マシーンの暴虐
そのまんまじゃなかろうか。
そう考えると。
悪夢機械の忠実な映像化としては
パル版のどっかユーモラスな円盤よりも
むしろずっと原作に忠実なのだと思う。
そんな殺人兵器が、
迫力満点にバンバン人を殺しまくり
とってつけたようなハッピーエンドを足した
この映画は、ほぼ完全にバランスを失った
米国産のとち狂った「娯楽作品」として
不気味な稲光を炸裂させている。
怖いよ。
映画は、さすがに「戦争」がテーマなだけに
マイノリティ・レポートほどの悪ふざけ連発はなかったものの
細かいギャグは、あいかわらずちょろちょろ入っていて、
生真面目なおれの神経を逆撫でしてくれるw。
オーサカでは何機か倒したというセリフが
半分正気を失ったティム・ロビンスの口から漏れるが、
オーサカって・・・誰の入れ知恵なんだろう?
スピルバーグの個人的な印象??
コメント (2)
どこかの批評でみたんですが、70億人が死なないとトム・クルーズはよい父親になれない、ということらしいですね。
たしかに、ソファの上でジャンプしてる場合じゃないらしい。
投稿者: プライアK | 2005年07月23日 11:09
日時: 2005年07月23日 11:09
より正確にいうと、70億人が死んでる状況で(なぜか安全な)元妻のとこに子供を押し付けるだけで、いっぱいいっぱい…
というとこっすよ。身につまされますw。
投稿者: どっこい | 2005年07月24日 08:58
日時: 2005年07月24日 08:58