原作・脚本・監督 押井守
某社社内試写
TVアニメ版「うる星やつら」第122話「必殺!立ち食いウォーズ」でメガネ=押井・節が大暴走したエピソードは、当時(1984/2/8)ファンの間でも賛否両論の問題作だったw。メガネという監督の分身としか思えない演説キャラに、圧倒的好感を持っていたおれは、もちろん肯定派だった。
それから3年後の1987年2月7日に公開された「紅い眼鏡」で、なんと!もぐりの立ち食い蕎麦屋が描かれているのには驚かされた。「紅い眼鏡」で天本氏が演じたキャラクターは明らかにあの うる星やつら の問題エピソードに登場したキャラクターの実写版だったのだ!
さらにそれから19年後の2006年、立ち食いのプロは、ついに映画「立喰師列伝」として堂々と一本立ち、押井節が炸裂するのだ!
戦後擬似昭和史の中で語られる立喰師たちは、徹頭徹尾押井監督自身の自己言及だった。
まさに「説教」であり「自己批判」であい「総括」であり
なによりもすがすがしいまでに 私小説 だった。
全編、途切れなく饒舌に語られる擬似昭和史と立喰師の伝説は、結局すべて押井私史である。
惜しむらくは、それがすでに他の作品で語られた以上のものではないということだ。
すべてがもうすでにさんざん語られたネタなのだ。まとめただけじゃん!
それでも、アヴァロンよりはずっと素直に楽しめた。
押井監督のアジ演説は、伝統芸だ。
だからこそ、文字通り単なる集大成に過ぎないこの作品は、ファンにとっては安心できるなじみの芸の集大成として楽しめる作品となったのだ。
クローネンバーグやリンチなど、一見政治とは無縁ぽい監督の作品からはひそかに「政治的なメッセージ」を解釈することが容易なのに、いつも意識的なはずの押井作品からはなぜか「政治的なメッセージ」が受け取れないのだ。むしろ宮崎作品のほうが、作品として「政治的メッセージ」は顕著だ。語るに落ちる…って表現はアレだが、まさにそんな感じw。
日本を代表する2人のアニメ監督に、日本の政治の不毛さを象徴的に見てしまうのはおれだけではないと思う。
カマトトぶりが気持ち悪い宮崎監督よりも、伝統的な私小説作家みたいな押井監督のほうが好きなおれは、しょせんお里が知れようというものだがw、正直、この映画って押井監督を知らない人が見たらどう見えるのかが気になる。
つうか客入るのかこれ?!(泣笑…