監督:阪本順治
出演:江口洋介、宮崎あおい
138分
★
なんだこりゃ・・・
主題歌ダメ押しのぶち壊し(;´д`)ダメポ
なんだこりゃ…
力作だと思ったから、普段買いもしない前売り券買ってまで見たのに・・・
まるで通りすがりの中学生に、社会派の少年まんがを無理やり読まされたような居心地の悪さ。
映画前半ではあまりのステレオタイプな描写に辟易していた宮崎あおいのキャラが、終わってみればいちばんまとも(リアル)だったという意外な展開だけが救いだった。
新聞記者、カメラマン、NGO職員、人身売買するペド、ヤクザ、それを薄々知りながら自分のこどもを救うために(以下省略)といった映画に登場するキャラ連中は、映画館に座る大半の観客にとっては他人事だろう。世界の地獄を無知な大衆に教えることは私の仕事ではない。ましてやタイに行ったこともなければ、同姓異性に限らず幼児に性的興味なんぞ持ちようもない。こどもは重病で死にかけてもいないし(省略…。
それはそれとしても、同じ年齢のこどもを(!)殺人前提だと薄々知りながら臓器移植に合意することに葛藤も糞もありゃしないだろう。バカか?そんなことで命を存えたとして、当の子供に将来いったいナニをどう説明できるのだ?嘘つくのか?「いやあ、あんときは大変だったよ。幸い金はなんとかなったから貧乏人の知らないこどもの心臓を買ったんだよ。え?提供者?おとうさん知らないよ。うぇっはっはっは」なんて説明するつもりなのか?考えないわきゃないだろう。つか、そんな程度の薄っぺらなキャラを「悪」に分類できないでどうすんだよ!
どっちにせよ「登場するキャラの葛藤」など、所詮他人事だ。「映画の登場人物」への感情移入は、それが「恐怖」だろうが「喜び」だろうが「悲しみ」だろうが、たいした意味はない。なぜなら、そんなものはすべてフィクションだからだ。
むしろキャラクターがあたふたと迷う「世界の地獄描写」こそが命だ。
この映画でいちばん衝撃的だったのは、背景扱いの少女の描写だった。これはすごい。日本人の糞みたいな葛藤なんぞどうでもいい。邪魔なだけだ。すべてのエピソードはムダである。
むしろあの少女を主人公に2時間通せば良かったのではないか?
それでこそ、映画は、見に来た観客全員の心に深くトラウマを刻み込めたはずだ。
ネットの感想文をあちこち見てみたが、あのオチは原作にないらしい。そりゃそうだろう。あまりにも不自然だ。話をまとめりゃいいって問題じゃないはずだ。テーマの深刻さを思えば、ありえない出来過ぎキャラだ。あれでは勧善懲悪の結末でしかない。映画の中で悪はキッチリ決着させられてしまっている。あれじゃむしろ現実の酷さをごまかしてるようなもんじゃなかろうか。
・・・。
それにしても、酷かったのは主題歌だ。映画が始まる前の休憩時間に場内で流れていたが、まさかほんとうに映画のさいごに流れるとは…。じっさいに流れてもなお自分の耳が信じられないくらい酷いシロモノだった。いったいどこの誰がなにをどう判断したらあの桑田某の昭和歌謡が、この映画の主題歌として成立できるなどと考えたのだろうか?この映画でいちばん気持ち悪かったのは、ペド描写でも病気描写でも人買シーンでも●●シーンでもない。桑田某のきもちわるい主題歌だ。なにもかもぶち壊してると思うのだが… あれはいったいなんだったのだろう… ほんとうにキモチワルかった…
映画としては、リンクレイターのファーストフードネイションのほうがすばらしい。テーマは地味だが、普通の暮らしを支える闇の深さがみごとに描写されている。
地獄への道は、善意でつくられる。
逆に言えば、
徹底した悪意を持ってしか地獄を回避する道は描けないのだ。