インタビュー=大須賀瑞夫
ちくま文庫
2008/5/10 第1刷発行
¥880+税
昭和史を駆け抜けた男の「夢と現実」初の文庫化
底本:1993/9文藝春秋刊第9刷
★★★★
こりゃおもしろい!!
第一章 会津武士と武装共産党
第二章 昭和天皇と玄峰老師
第三章 オットー大公と田岡一雄
第四章 世界の石油と鄧小平
第五章 ハイエク教授と今西錦司教授
解題 大須賀瑞夫
インタビューを終えて
文庫版あとがき 歴史の地下水脈をたどって
関係略年表
戦前は武装共産党の指導者、戦中は逮捕獄中で転向天皇主義者へ、60年代には全学連に資金援助、田岡組長とも仲良しで、国際石油取引で暗躍という履歴からは、生きた人間のイメージがまったくわかなくて困った。
が、自伝を読めばなるほど疑問はかなり氷解した。
田中清玄のアイデンティティは、会津藩魂ベースのブルジョア革命だ。マルクスを読み込む必然性などなにもない。共産主義者ではなく、もともと尊王派だから天皇制を全肯定してしまうのも当然だ。ハイエクや今西、田岡組長との関係も日本のブルジョア階級の近現代史を考えれば、とくに不自然でもなんでもない。
それにしても、おもしろエピソードはてんこもり。
周恩来とフルシチョフの話はよくできたジョークとしか思えないが、清玄によれば実話として語られてしまっている。
靖国公式参拝には断固反対という由来もおもしろい。敗戦直後に、数珠を持って礼拝しようとした清玄に、若い神官が数珠はダメだと「神道の形式」を強要。怒った清玄は一喝後、二度と靖国へは行かなかった。さらに「官軍」の護国神社にすぎない靖国神社は「会津藩」の人間にとっては何が靖国神社だもんだ!というわかりやすい論理展開。
「あんたなんだと聞かれたら、今でも右翼だとはっきり言いますよ。右翼の元祖のようにいわれる頭山満と、左翼の家元のようにいわれる中江兆民が、個人的には深い親交を結んだことをご存知ですか。ひとつの思想、根源を極めると、立場を超えて響きあうものが生まれるんです」
インタビューからおこした本書からは、人間的な魅力に満ちた田中清玄が存在している。清玄が軽蔑しきっていた岸信介と児玉誉士夫なんかだと、同じコトをしてもこれほどおもしろい自伝にはならなかったろう。
そんな清玄が尊敬する右翼は二人だけ。橘考三郎 と 三上卓。
だからといって二人の著書を読むことはないだろうが・・・(以下省略
>>アメリカから来たスパイたち
>>松川事件の真犯人
>>葬られた夏 追跡下山事件
>>日本の地下人脈 戦後をつくった陰の男たち
>>完全版 下山事件 最後の証言
>>何も知らなかった日本人 戦後謀略事件の真相
>>松川事件 謎の累積
>>三鷹事件 1949年夏に何が起きたのか
>>下山事件 最後の証言
>>日本の黒い霧 上
>>謀殺下山事件
>>下山事件 シモヤマ・ケース
>>下山事件資料館
>>東京紅團●「下山事件」を歩く
>>